第12回Emerging Technologies for the Enterprise(ETE) Conferenceカンファレンスの第1日が2017年4月18日(火)、ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるSociety Hill Sheratonで開催された。2日間にわたるこのイベントを企画したのは、同州フォートワシントンにあるITコンサルティング会社のChariot Solutionsだ。カンファレンスではBlair MacIntyre氏(拡張現実の先駆者)の他、Monica Beckwith氏(Oracle JVMパフォーマンスコンサルタント)、Andrea Goulet氏(Corgibytes CEO)、Yehuda Katz氏(Ember.js開発者のひとり), Jessica Kerr氏(Atomist リードエンジニア)、Jake Wharton氏(Square Androidエンジニア)ら招待講演者による基調講演が行われた。
基調講演
拡張現実(augmented reality)の第一人者でMozillaの主任研究員である、ジョージア工科大学インタラクティブコンピューティングスクール教授のBlair MacIntyre氏による、“The Web as Platform for Augmented Reality Experiences”と題した基調講演を皮切りに1日目が始まった。氏は拡張現実を、“3Dで認知された人の世界観とメディアのリアルタイムな混合”と定義している。
下の写真が示すように、MacIntyre氏は、1968年のIvan Sutherland氏の“The Ultimate Display”に始まり、現在のヘッドマウントディスプレイ、そしていつか実現するであろう通常の眼鏡型のディスプレイに至るまで、拡張現実の過去、現在、将来の可能性を探った。
氏は“拡張現実のためにWebを利用できるだろうか?”と問いかけた上で、開発者は“このハードウェアを含むすべてのものを‘Web上で’活用”すべきだ、と示唆した。今日ではWebVRやWebRTCといった技術によってシンプルなARが実現しているが、果たしてこれで十分なのか、と氏は疑問を呈した。
現在はIntel LabsのプリンシパルエンジニアおよびリサーチマネージャのRon Azuma氏による1997年の白書“A Survey of Augmented Reality”に基づいて、MacIntyre氏は、当時Azuma氏が調査したビデオ混在型の仮想現実フローチャートを分析した。
拡張現実の課題として、MacIntyre氏は次のものを挙げている。
- リアルタイムで表示される必要がある。
- 表示の内容が、対象とする世界をすでに知っているか、あるいはすでに認知可能であるものに限定されている。
私たちの周りの世界をよりよく理解する上で、拡張現実の将来の発展のために次のような分野での改善が必要だ、とMacIntyre氏は主張する。
- ディスプレイ
- センシング
- サービス
MacIntyre氏は、Webアプリケーションに拡張現実を加えるJavaScriptフレームワークのargonjs.ioと、ジョージア工科大学のArgonプロジェクトを紹介した。説明に使用されたスライドは、氏のWebサイトから入手可能だ。
注目された講演
AtomistのリードエンジニアであるJessica Kerr氏による、“Automating at a Higher Level with Atomist”。この中で氏は、AtomistにおいてSlackやGitHub、Travis、Docker、Kubernetesといった技術を用いて構築プロセスを自動化した方法を解説し、ライブデモでRandom Kitty Adoptionアプリケーションを作成した。開発プロセスを自動化し、ユーザ向け開発の自動化を促進することによってAtmostでは、アプリケーション変更の迅速化のみならず、その正確性も向上したとKerr氏は主張している。
HazelcastシニアソリューションアーキテクトのViktor Gamov氏による、“Java Puzzlers Next Generation: down the Rabbit Hole”。書籍“Java Puzzlers: Traps, Pitfalls, and Corner Cases”に基づいて、Gamov氏は、Java 8用に設計された新しいJava“パズル”に聴衆を挑戦させ、正確に説明できた人にはHazelcastのTシャツをプレゼントした。講演のスライドはSlideShareで公開されている。
SquareのAndroidエンジニアであるJake Wharton氏の講演“Managing the Reactive World with RxJava”。プレゼンテーションの中でWharton氏は、“システム全体を同期的にモデル化できない限り、ひとつの非同期ソースが命令型プログラミング(imperative programming)を損なうことになる”と主張して、簡単な例でこれを実証してみせた。氏はRxJavaのObservable<T>とFlowable<T>のソースを比較し、これらのソースを監視(observe)する方法や、データの操作ないし排出(emit)を行なうオペレータについて説明した。最後に氏は、Java 9とJEP 266について簡単に論じ、リアクティブなパブリッシュ/サブスクライブフレームワークをサポートするインターフェイスをカプセル化した新クラスのFlow
を紹介した。スライドは氏のWebサイトにある。
LightbendエンタープライズアーキテクトのKiki Carter氏による、“‘Somm’ Lagom: Building Systems That Age Like Wine”。Carter氏が論じたのは、短期間システム構築の新時代において企業開発者が直面する課題についてである。例えば,
- あまりにも多くの選択肢による分析まひ状態
- 拡張時のアーキテクチャ整合性の維持が困難
- 専門家の必要性
- 計画外の複雑性とカオス
氏はLightbendのマイクロサービスフレームワークであるLagomを紹介し、今日の企業の課題にどのように取り組んでいるかを説明した。“急速な変化は、往々にして急速な老朽化である”、と主張する氏は、講演の結論として、“変化のペースに追いつき、変化するシステムにおけるアーキテクチャの整合性を維持するためには、アプリケーションを超える抽象レベルを提供するフレームワークを試してみるべきだ”、と述べた。
要約
第1日目には、Java、Scala、Reactive、Microservices、Android、Scio、JavaScript、Cassandra、DevOps、Clojureなどのトピックで、合計25の講演が行われた。
記者について
Michael Redlich氏は2008年から出席者および講演者として、2013年以降はETE運営メンバのひとりとして、ETEに積極的に参加している。
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