Heather Miller氏(研究科学者)によるScala Days BerlinでのScala Daysの基調講演にて、新たなScala Centerの詳細な内容が発表された。 Scala Centerは、教育とオープンソース・コミュニティにフォーカスした非営利団体である。
最近のInfoQの記事でも、Scala Centerを紹介している。 ここでは、さらに詳細な内容を紹介する。
なぜCenterなのか?
ブログ記事(2016年3月14日)に記載されている通り、Scala Centerは、Scala技術者の市場拡大、およびScala tutorialのGoogle検索の頻度上昇をきっかけとして設立された。Scalaは単にLightbend社によってメンテナンスされているScala 2.xコンパイラという事にとどまらない、とMiller氏は語る。Scala Centerは以下のことに注力する。
- ライブラリ
- Scalaコミュニティ
- Scalaエコシステム
- Dotty
- 代替バックエンド
Scala CenterはÉcole Polytechnique Fédérale de Lausanne (EPFL)に設置され、Miller氏(事業部長)が指揮する。Scala Centerの顧問会議は次の代表者から成る。
- Scala Center代表者
- コミュニティ代表者
- 企業代表者
Adriaan Moors氏(Lightbend社のScala技術リード)は、彼らのScala Centerへの関与について、InfoQに語った。 彼がScala Centerの活動に関与するかをInfoQが質問したところ、彼は答えた。
そうです。Lightbend社のScalaチームリードとして、私はScala Centerの委員ですし、SIP/SLIP委員会の委員でもありますから。
これらの活動から得た知見を聞いたところ、Moors氏は以下のように語った。
私たちは、素晴らしいスタートを切りました! 私は熱心な方々と一緒に仕事ができて、とてもうれしいです。 彼らはコミュニティを盛り上げ、興味ある発言をしてくれます。 私たちLightbend社は、安定的でロバストなScalaディストリビューションの開発に対するコミットと、私たちの変革のバランスを取っていきます。両者を結びつける鍵となれることをうれしく思います。
Lightbend社の継続的な役割
Miller氏は、今後について、以下のようにアナウンスした。 Scala Centerは、Lightbend社とは直交した作業を担当する。 Lightbend社がScalaの安定的なリリースのメンテナンスを継続するのに対し、Scala CenterはライブラリやScalaエコシステム、さらに直交的に、Dotty、Scala.js、そして Scala Nativeといったものに注力する。Lightbend社がScala Centerとどのように作業を進めていくのかを質問したところ、Moors氏は答えた。
Lightbend社は、企業規模のScalaディストリビューションに注力していきます。 Scala Centerはさらに先見的な、実験的なプロジェクト(dottyのような)に注力します。 彼らはほかにも、コミュニティ指向のプロジェクトを推し進めます。 例えば、Scala 2.13の標準ライブラリなどです。
Scalaの学習機会
Scalaの学習機会は、Coursera上のScala MOOCs (Massive Open Online Courses)により提供されている。 個々の修了認定制度のないコースは無料である。Scalaサーティフィケイトおよび小単位を提供するコースは有料である。
Miller氏は、複数週にわたるコースが、オンデマンド形式で受講可能になった、とアナウンスした。これにより、以前の期間限定形式を利用していた際にあった「待ち時間」が無くなる。 Miller氏は、Coursera上の複数週にわたるコースを4つ、提示した。
- Functional Programming Principles in Scala
- Functional Program Design in Scala
- Parallel Programming (新規)
- Big Data Analysis with Scala and Spark (新規)
オープンソース・コミュニティ
Scala CenterはScalaコミュニティのための事業を行う。 2016年3月14日のブログ記事によれば、以下の通りである。
Scala Centerの最初のミッションは、ユーザ・コミュニティに付き添うことです。 共通のゴールを定義し、ゴールに向けて、提供物とリソースを編成することです。Centerは、Scalaエコシステムに現在存在しているものを助け、補完します。たとえば以下があります。
Lightbend社(かつてのTypesafe)は、Scalaの安定版のメンテナンスを継続します。Lightbend社はCenterの設立者のひとつです。そして、Lightbend社のエンジニアはプロジェクトに参加できることを楽しみにしています。
既存のオープンソース・プロジェクトおよびプラットフォームは以前と同様に活動します。 Centerは、パッケージインデックスの使用により、オープンソース・ライブラリをより発見しやすくするよう支援します。 これは、プロジェクトがより幅広い関心を獲得し、リソースを獲得するための手段ともなります。
Miller氏は、Scalaコミュニティは相談を受けることになる、とInfoQに語った。
Scala Center開発の影響を判断するための方法として行います。 これは、開発者コミュニティから単に聞き取りするにとどまらず、彼らに対して1社単独で協力する以上のことを行います。
Scala Center開始後、コミュニティの関与が増大したかを質問したところ、Moors氏は答えた。
私たちの協力が、流れを加速した、と強く感じます。 しかし、明確なデータはありません。 Scala Centerは確かに協力しました。しかし私は、この分野に対する私たちの影響を明確にしたいと思っています。技術的な最前線(技術的負債を取り除くための多大な投資、および新規参入者に対してコードベースを利用しやすくすること、標準的なsbtビルドへの移行、高速で完全にオープンソースなCIの提供)としても、社会的な面からもです。Lightbend社の全チームは、フィードバックとpull request、コンパイラやライブラリ開発へのアドバイスのために多くの時間を費やしました。これらはgitterや、その他のフォーラムを通じて行われました。
Scaladex - 新たなScalaパッケージインデックス
氏の基調講演の中で、Miller氏はクイズを行った。 “Node、HaskellおよびRustではできていて、Scalaではできていないものはなにか?” 答えは"パッケージインデックス!"
Miller氏は以下のように述べた。
もしあなたがオープンソース・ライブラリを開発したら、あなたはMavenか何かでそれを公開するだけでよいでしょう。人々にライブラリを使ってもらうために、あなたが優秀なセールスマンになる必要はない、と私たちは考えています。
この新しいパッケージ・インデックス、Scaladexは、Scalaライブラリと生成されたリソース(POMやGitHub、StackOverflow)からなる、Scalaエコシステムの地図である。 開発者は自身のScalaライブラリをコミュニティと共有するために公開する場所を得る。 また、設定情報を追加したり、“Scalaコミュニティ“バッジを彼らのGitHub READMEファイルに追加できる。 Miller氏は次のように語る。“私たちは、マーケティングを必要とせずに、素晴らしいプロジェクトに賞賛を与えたいのです”
Miller氏は、Scaladexによるいくつかの利益を語った。
- 幅広く利用されている公開ライブラリのデモ
- オープンソースのビルドファイルからの重要情報の分離と開示
- ライセンス情報の開示
- Scalaエコシステム全体の、Lightbendコミュニティへの追加
- 文書とモジュール間のリンク
2016年8月9日のブログ記事にて、Scaladexのベータバージョンのリリースがアナウンスされた。
SIP/SLIP - コミュニティの参加
Scala Improvement Process (SIP)とScala Library Improvement Process (SLIP)は、ScalaコミュニティがScalaプログラミング言語およびライブラリの変更に協力する2つの道となる。 Miller氏は、2016年7月12日のブログ記事にて、開発者向けSIPの改訂について述べた。
委員会メンバによる発議があり、次の件について全会一致にて議決しました。 Scala CenterはScalaの統制の明確化に責任を持つこと、特に言語と標準ライブラリの改訂に対し、公開され、協調的なプロセスを保証することです。このゴールを追及するため、本日ここに、私たちは改訂版Scala Improvement Specification and Submission Processを公開します。
本プロセス改訂における一つの主要なゴールは、全ての提示済みSIPが時宜に即して改訂されることを保証することです。また、SIPの著者に対し、提案の改善についてのフィードバックを受け取ることも保証します。
Miller氏はさらに、“提示済みSIPは、キューに溜め込まれてしまう傾向があります”と指摘する。 InfoQはMoors氏に、新しいSIP提示プロセスの実装に関し、この分野の改善に関する知見があるか、質問を行った。
あります。 私たちは、新プロセスを用いた最初の会議を行いました。反応は上々でしたよ!
Moors氏はLightbend社がリードしているSIPプロセスがあるか、という質問に答えた。
私たちは密接に関与しています。しかし、コミュニティプロセスをリードすることはしません。 私たちLightbend社は、全ての人がもっとも関心を持つべきことは、Scala Centerのようなコミュニティを代表する存在をもつことだ、と感じていました。 これが実現したことをとてもうれしく思っています! 強力してScalaの未来を作り上げましょう!
今夏のMiller氏のメッセージは、 Scala Centerは“全ての面で良いもの”であり、“コミュニティ = 私たち全て”である。 Scala CenterとLightbend社は開発者がScalaエコシステムに協力してくれることを応援することである。
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