アジャイル式の考え方をテストするために、あるソフトウェアチームは、キックオフエクササイズ、コーヒーブレイクの共有、「勝利」のお祝い、スタンドアップクエスチョン、1対1のトークなどで心理的安全性を高めた。ScanAgile 2023での講演で、Pirita Maarit Johnsen氏は、ソフトウェアチームの心理的安全性をどのように高めたかを共有した。
キックオフで、チームは自分たちの仕事のやり方について下記のように合意した。
- 手法としてスクラムを使う
- 可能な限り、このプロジェクトだけに取り組む
- クライアントに対して完全な透明性を保つ
- プロジェクト全体を通じて、クライアントがチームの一員であることを奨励する
Johnsen氏は、これはチームとクライアントにとって新しいアプローチであり、チームはプロジェクトでアジャイル式の考え方をテストし、そこから何かを得られるかどうかを確認することにコミットしたと述べた。
チームのメンバーには、何年も一緒に仕事をしている人もいれば、新しい人もいた。お互いを知り、心理的安全性を得るためにいくつかのことを行った。例えば、「目隠しをして自画像を描こう」などである。
Johnsen氏は、チーム内で新しい働き方が実践される間、技術的な話題だけでなく、個人的な話題や希望や不満についても、チームメンバー同士でより話し合うように促した。このような話し合いを可能にするため、同氏はシナモンパンを用意してコーヒーブレイクの共有を企画した。
「勝利」を祝うこともまた、同氏がチームメンバーに求めたことだった。
プロジェクトが前進していることを実感させ、チームスピリットを高めることで、心理的な安全性を高めることにもつながりました。
スタンドアップミーティングでは、「今日は他の人とどのように協力できるか、あるいは他の人の助けが必要なことはあるか?」という、ある特定の標準的な質問を使った。これによって共同作業の開始が容易になり、チームメンバー間のコミュニケーションが高まったとJohnsen氏は述べる。
Johnsen氏はまた、チームメンバー全員と1対1で話し合い、個人的なレベルでお互いをよく知るようにした。
私たち2人は、自分がどんな人間なのか、どんなことに興味があるのか、仕事のやり方についての好みなどをより多く明かしました。そうすることで、共通の興味や、技術的な質問以外の話題も発見できました。
Johnsen氏は、ソフトウェアチームでのアジャイル導入から得た学びを共有した。
うまくいったのは次のようなことだ。
- アジャイルの方法論と考え方に関する明確なコミュニケーション
- 最初期:毎日のスタンドアップのような良い習慣を作るために、プロセスをシンプルに保つ
- たとえ失敗するかもしれないとしても、チームに何をすべきかを決めさせること:そうすることで、チームは自分たちにとって最適な作業方法を発見できるため。
うまくいかなかったことは次のようなことだ。
- 他人にアジャイル手法を使うよう強いてしまう
- すべきことは伝えるが、なぜそうするのか説明しない:例えば、なぜレトロスペクティブが重要なのかを説明する必要がある
Johnsen氏は、自分が古典的なチームリードとして行動しているのではなく、よりメンタリング的なアプローチを使っていると述べた。
私は理論的な事例や他のチームの経験から例をあげ、その後どのような方法を試したいかを彼らに決めさせました。
プロジェクト期間中、チームメンバーは、アジャイルな仕事のやり方が日々の仕事量にどのように役立つかを経験した、とJohnsen氏は締めくくった。
InfoQは、Pirita Maarit Johnsen氏にアジャイルの採用についてインタビューした。
InfoQ: チームのメンバーは、アジャイルへの変化をどのように経験しましたか?
Pirita Maarit Johnsen氏: チームメンバーは、アジャイルへの変更中に様々な経験や感情を持ちました。前向きで変化を受け入れた人もいれば、ためらいや不安を感じた人もいました。彼らの経験を表現するのに使われた言葉の例としては、次のようなものがあります。「混乱」、「官僚的な言葉」、「変化は良いことだ」、「他人の計画」です。
プロジェクトの終わりにチームメンバーにインタビューしましたが、その質問の1つに、アジャイル組織への変化について与えられた情報についてのものがありました。ある人はこう答えました。「情報は与えられたが、理解できるような言葉ではありませんでした。しかし、それでも大きく改善したでしょう。」
我々が変化と共に目標を達成したかどうかを質問すると、ある人は、こう答えました。「いいえ、それには時間がかかります。時間がかかるのはいいことです。私たちは止まることはありませんし、開発を止めることもありません。私たちの周りで何かが起これば、もっと学ぼうという気持ちになります。」
InfoQ: 組織においてアジャイルへの変化を確立し、促進するための提案は何でしょうか?
Johnsen氏: 私がいくつかの場所で経験したことですが、マネージャーや技術部門のリーダーは、なぜアジャイルへの変化を望んでいるのかさえわからないまま、アジャイルへの変化を推し進めています。たいていは、コンサルタントがマネージャーやリーダーに、「それは本当にホットで素晴らしく、あなたの会社を存続させるからだ!」と言ってきたからでしょう。
このような場合、リーダーは(スクラムのような)メソッドを守るだけで十分だと考えていることが多く、なぜ特定の方法で物事を行うのかを伝えることなく、人々(この場合は開発者)に何をすべきかを指示することで変革が起こると考えています。
そして失敗すると、人々は抵抗し、指示を機械的に実行するか、まったく実行しなくなり、アジャイル式のマインドセットが持つ真の可能性に到達できなくなってしまいます。