オープンソースのメンテナが経験する3つの有害な行動とは、権利の主張、不満を爆発させる人、そして明らかな攻撃である。問題のある行為に耐性ができて無視するようになると、怒りや悲しみの負のスパイラルに陥ってしまう。そうならないように問題のある行為に声をかけ、オープンソースの本来の意味がコラボレーションと協力であること人々に思い出させるべきなのだ。
Gina Häußge氏は、OOP 2023 Digitalで、オープンソースのメンテナとして有害な人々への対処について講演した。
Häußge氏は、メンテナが常に経験する3つの有害な行動があり、もっとも一般的なものは"権利意識"で、多くのユーザーは、自分はすでに何かを与えたのだから借りがあると考え、その要求に応えないと攻撃的になりがちだ、と述べている。
また、自分の期待通りにならないことへの不満を爆発させる人もいて、その過程で罵倒されることもあるとのことだ。
3つ目の有害な行動は攻撃である。その多くは自分が権利を持つ要求が満たされないか、フラストレーションを解消できない人によるもので、これに加えて"荒らし"もある。
それは、罵詈雑言から、自分の命を絶つことを勧めるようなものまでありました。
Häußge氏は、毒舌に対処するために耐性をつけて問題のある行為を無視するようにしていたと述べた。彼女はそれを自身の欠点だと考えていた。しかしそれは人間の本質やストレス反応のサイクルを無視していたことでもあると、説明している。
無視しようとすると何日も、時には何週間もそのことが頭の中で延々と繰り返され、ますます怒ったり悲しんだりするようになります。そしはコミュニケーションにも影響し、事態をエスカレートさせたり、別の問題を引き起こしたりすることも多々ありました。
彼女はそういった権利意識や他人のガス抜き行為に直面したとき、しばしば職場の現実を思い起こさせると述べている。「オープンソースとは、コラボレーションと協力であって、要求することではありません。」と彼女は言う。ソースコードだけでなくドキュメンテーションやバグ分析なども同様である。
自分がやらなくていいと判断できると、他の人の問題を解決するためのコーディング時間が生まれるのです。
Häußge氏は「問題のある行為への対処は、メンテナだけが責任を負うべきことではない。」と言う。「私たちは皆、悪い行為を見たらそれを見分け、呼びかけることもできる。メンテナに任せて自分の境界線を守ったり、罵倒を黙って受けたりする必要はない。」と彼女は述べた。
彼女は、常に自分自身を見つめて、自身が加害者にならないようにすることも大切だ、と言う。
常に相手のことを考えましょう。
InfoQは、Gina Häußge氏にオープンソースのメンテナに対する有害な行動についてインタビューした。
InfoQ: 毒舌がメンテナとOSSコミュニティの両方に与える影響について、あなたはどのように観察しましたか?
Gina Häußge氏: 何年もの間、私は多くのOSSメンテナ仲間と話をしましたが、一般的なコンセンサスは、私自身の経験も反映しています。こうした経験は、1日、1週間を台無しにし、時にはなぜメンテナを続けなくてはいけないのかと真剣に悩んでしまうこともあります。これは確実にメンテナの燃え尽き症候群の原因となり、プロジェクトのリスクになります。たくさんの細かい傷を受けてじわじわと破滅に向かうようなものですね。そして放置するとコミュニティ全体を有害なものに変えてしまうのです。
InfoQ: どのようにして有害な行為への対処方法を学んできたのですか?
Häußge氏: ストレス反応のサイクルを解決する方法は、体を動かすことです。私はオフィスにサンドバッグを置いているのですが、これを30秒使うだけでも心臓がバクバクするんです!私が脅威を認識しそれに対して何かを行っているという信号を脳に送り、ストレス反応のサイクルを完成させるものです。そうすれば私は再びコントロール可能になり適切な次のステップを踏めるようになります。
もし事を荒立てるなら、問題のある行為は許されないとはっきり言うことにしています。この方法でこれまでに多くの謝罪をしてもらいましたが、ときにはエスカレートすることもありました。そんな場合はコミュニティから出ていってもらい、場合によっては永続的に追放しています。
InfoQ: オープンソースプロジェクトにおいて、有害な行為に対処するためにできることは何でしょうか?
Häußge氏:オープンソースコミュニティのよくある主張は、メンテナとして耐性を上げて問題のある行為をする者を無視するべきであり、もしそれができないのであれば、単に仕事にむいていない、というものです。
私はこれには反対です。このような扱いを受け続けると、心が折れてしまうか、より悪い人間になってしまうかのどちらかであり、どちらもOSSのメンテナンスをしたいがために受け入れなければならないことではありません。自分自身の境界線とプロジェクトの行動規範を強化し、人間的な良識を持って扱われることを求めてほしいです。