要点
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一員になりたいと思えるほど素晴らしい成果をあげるチームに出会ったことはありますか。そのようなチームの価値を調べてみると、メンバと成果の方向性のバランスが完璧であることを見つけるかもしれません。自分のチームがこの状態からどのくらい離れているか調べようとするなら、この記事を読んでエクササイズを実施してみてください。正しい質問と答えによって、あなたにとっての完璧な状態を見つけることができるでしょう。
1960年代、Robert Blake氏とJane Moulton氏はさまざまなリーダーシップスタイルを調査し、リーダーシップはふたつの次元で計測できることを発見しました。人に対する関心と成果に対する関心です。彼らはリーダーシップを表す格子を作成しました。
彼らによれば、リーダーシップのスタイルはチームワークに影響します。この論文は、チームの動きと健全さを評価するための基礎を築きました。
働く組織の概念は毎年進化してきました。自己組織化されたチームが高い成果を生み出すことを見つけたのはアジャイルの実践家だけではありません。強いマネージャは高い成果を生み出すチームの必須要件ではありません。しかし、それは自己組織化されたチームにはリーダーシップがないということではありません。そのようなチームはたくさんのリーダーシップがあります。ひとりに集まるのではなく、チームのメンバ全員に分散されているのです。
分散されたリーダーシップはBlake氏とMoulton氏の論文を無効にするものではありません。人と成果に焦点を当てバランスを取ることはチームにとって大事です。そのようなバランスを存続させるためAlexis Phillips氏とPhillip Sandahl氏はBlake氏のリーダーシップ格子をベースにしたチーム診断モデルを提案しました。ふたりはマネジメント側の“人に対する関心”を、チームの精神と働く楽しみを反映したチームの肯定的な性質を計測するものに変換しました。また、“成果に対する関心”は成果を上げるための効率さという意味でのチームの生産性に変換しました。かれらはこのふたつの領域の重要な性質を特定しました。一覧するとアジャイルの考え方と整合することに驚きます。
チームの肯定的な性質の要因として、ふたりは次の項目を指摘しています。
- 信頼 — すべてのチームのメンバが他のメンバに対して信頼を持っている
- 尊敬 — 全員を価値あるパートナーとして接する
- コミュニケーション — 非暴力的なコミュニケーションが解決を志向する
- インタラクション — フィードバックの授受、衝突を改善の機会と捉える
- 友情 — 共感を感じること、親切さの表現、友人になること
- 楽天主義 — チームメンバが肯定的な見方をするということ
- 価値の多様性 — 多様性が新しいアイディアと異なる視点を生み出す
生産性の要因は、
- ゴールと戦略 — チームが製品に対する明確なゴールとビジョンを持つ。優先順位を決める。同僚はゴールの実現に対するフィードバックを素早く与える。
- 提携 — このビジョンに対して繋がっている感覚を持ち、チームのゴールと個人のゴールを整える。
- 結果に対する責任 — 全員が自分のベストを尽くす。製品に対する責任感を持つ。
- リソース — 現在の必要なスキルセットと道具だけでなく、欠けているリソースを見つけ要求する。
- 意思決定 — チームのレベルで意思決定する。
- 前向きさ — 変化を受け入れ、変化を提案するときに創造性を発揮すること。
- チームリーダーシップ — グループとしてのチームは強いリーダーシップを持つ。どのような特定の状況でも、チームの“ローカルリーダー”はチームが一定の方向を向くように率先して動く。
Blake氏とMoulton氏の4事象のそれぞれの事象に属するチームはどうなるでしょうか。
肯定的な性質と生産性の両方にフォーカスしなければ、チームは完全に燃え尽きてしまうか、成果を出せないか、その両方になるかもしれません。避けるためには、生産性と肯定的な性質を繰り返し進化させる必要があります。スクラムマスターとアジャイルコーチはこれらのアイディアを理解して、肯定的な性質と生産性の概念を利用するとよいでしょう。
優れたクスラムマスターはチームが継続的に両方の領域を改善しバランスを取るように促進します。改善するためには、まず、自分がどこにいるのか知ることです。私はさまざまなエクササイズを通じてチームが効果的な働き方を定義する機会を見つけるのを支援してきました。以降、Esther Derby氏の振り返りのフレームワークに基づいた肯定的な性質と生産性のバランスという考えを使ったエクササイズを示します。
エクササイズ1: 価値を作る
このエクササイズのゴールはチームの価値のセットを定義することです。
このエクササイズは仕事の取り決めを定義するのに使えます。また、チームの隠れた対立を解決するのにも効果的でしょう。また、チームビルディングの活動として、相互理解を深めるのにも役に立ちます。
フェーズ1: 目的を説明する
制限時間: 5分
ミーティングの期待する成果を説明します。例えば、“チームにとって共通のゴールを持つことだけでなく、仕事の取り決めを支える共通の価値を持つことも重要だ。ここで時間をチームの価値について話たい、がまずは、遊ぼう。”
フェーズ2: メンバを激励する
制限時間: 10分
部屋の大きさとチームの雰囲気に適したなんらかの活動を見つけます。チームワークやチームのメンバの多様性を示す何か活動をやってもらいます。逆に似ている点を引き出すようなものもよいでしょう。
何も思いつかなければ、この記事の最後に書かれているリンクを参考にしてください。トレーナーと単純なゲームのためのリストです。ゲームを複雑にしてはなりません。すべてのチームメンバが参加するようにしてください。参加者を自身の快適な領域の外に連れ出すようなゲームだと良いでしょう。楽しんでください。これは時間を無駄ではないのです。
エクササイズの終わりで、お互いのことについて何を学んだか聞いてみてください。
下はウィンド・オブ・チェンジというゲームの例です。
- 椅子(参加者の数よりもひとつ少ない)をサークル状に並べる。
- 椅子に座るように言います。椅子に座らないひとりの人はサークルの真ん中に立ち、次の言葉をそのまま言います。“私のような…な人に変化の風が吹く。…” — 例えば、“私のような犬を飼っている人に風が吹く。”
- 言われたような特徴を持つ人は立って、同じように立った他の人の椅子をめがけて移動します(今まで座っていた椅子に座ってはなりません)。
- 座れなかった人は次にサークルの真ん中に立って同じように風を吹かせます。
- 何回か繰り返してチームのメンバにお互いのことについてどんなことを学んだか話してもらいます。
フェーズ3: 洞察を生み出す
時間: 30分
さて、価値について話します。肯定的な性質と生産性について説明し、両方とも大事だと説明します。上のグラフを示してもよいでしょう。
快適度に応じて下の選択肢を使って議論を続けることもできます。
選択肢1: 上にあげたすべての肯定的な性質と生産性の要因をそれぞれひとつのカードにプリントします(14枚のカードが必要です)。カードをテーブルに置いて、それぞれを、生産性の要素か肯定的な性質の要素かを分類してもらいます。チームにとってカードに書かれた言葉が何を意味するか、議論を始めましょう。
選択肢2: アジャイルマニュフェストを持ち出すか、アジャイルの価値と原則について思い出してもらいます。チームにとってどのような価値が重要かを尋ねます。生産性と肯定的な性質についてはどの価値が影響するかを議論することもできます。
選択肢3: 各々に仕事上でもっとも重要な価値を3つの価値を書き出してもらいます。書いたものを全員から集めてこれらの価値をどのように理解したかを説明してもらいます。この中のどれが肯定的な性質に影響を与え、生産性に影響を与えるかを議論します。ユニークな価値が現れるでしょう。驚くかもしれません。
これらは単なる例です。チームに有効などんな方法でもよいでしょう。求めたい結果は共通の定義に基づくチームの価値を一覧にすることです。肯定的な性質と生産性で並べるのはゴールというより議論の発火させる方法として使えます。
フェーズ4: 計画を作る
時間: 30分
価値に優先順位をつけてもらいます。“必須”と“あったら良い”というラベルを使います。“必須”のそれぞれについて、どのような振る舞いがこの価値を毀損するかを尋ねます。この議論をチームの共通価値や仕事の取り決めについての合意に達するように調整します。終わったら、完成した一覧を示し、この一覧に同意できるかチームに尋ねてみます。賛意が得られたらこの一覧をチームのメンバが見えるところに張り出しましょう。
結果
私はこのエクササイズを仕事の取り決めを作るのに使います。私のアドバイスとしてはチームのメンバのそれぞれがどのような価値を拾い上げるのかを探ることです。チームメイトの振る舞いをより良く理解するのに役に立つでしょう。
私の経験では、ひとつの領域(生産性か肯定的な性質のどちらか)に属する価値だけを選択するチームは今までありませんでしたが、心地よいと感じる領域からより多くの価値を拾い上げる傾向のチームもあります。バランスを取るように押し返すことはしません。私の所感を共有するだけです。
人々(特にIT産業の人)に肯定的な性質の要因よりも生産性について話し、期待されている振る舞いを説明するのは簡単です。信頼や尊敬は説明が難しいですが、最終的には一覧に現れるでしょう。
次に示すのはこのエクササイズの結果、実際に現場で生まれた仕事の取り決めです。
ゴール: “それぞれのスプリントとストーリーは明確な受け入れ条件を持っていて、バックログの整理の間にチェックできる。視覚的なレイアウトは最低でも計画の段階で作成される。”
結果責任: “私たちは自分たちのコードに次のような責任を持つ。
- “レビューを受けていないコードはチェックインしない。
- “バグ修正を常に最優先する。
- “最低限75%の単体テストカバレッジを維持する。”
友情: “最低でもスプリントに1度は一緒に飲みに行く。”
尊敬: “時間を尊重する。遅刻しない。会議を延ばさない。16時以降に会議をしない。”
コミュニケーション: “Kateが家で働いていたら彼女の携帯に電話して、—メールは送らないで”と言う。
顧客とのやりとり: “毎週火曜日の午後1時にxxx社のオペレーターが電話で質問に答えてくれる。”
ルールを書き出したら、チームにはこのルールを実行するのには助けは必要ないでしょう。これが企業に強制された方針ではなく自分たちで作ったルールの強力な点です。仕事の取り決めを満たすことはすべてのメンバにとって恥ずかしいことではありませんでした。彼らにはスクラムマスターもマネージャの小言も必要ありませんでした。
また、次のようなメッセージをメンバに送りました。
- “来週は私の誕生日。毎月の飲み会を金曜日にしませんか。”
- “Mark、4時です。子供を迎えに行かなければならないので今日はもう終わり。残件を確認して明日にしましょう。”
- “今朝はちょっと怒っています。テストが3つ失敗しているのに誰も気にしていません。直しましたが、取り決め違反ですね。”
自分たちで作ったルールを破るのは誰かが作ったルールを違反するより難しいです。
自分たちでルールを変更できるのも私たちが見つけた利点のひとつです。正確に動作しないルールを作ってしまったなら、チームの了承を得て変えればいいのです。
上級マネージャから私によく尋ねられるのは、チームはこの変更可能性を乱用するのは恐くないか、ということです。恐くはありません。私は2008年に自分のチームに外部のルールを押し付けるのをほとんどやめ、欲するものについて話を聞いてきました。
私が直面したもっとも困難な状況は、チームがシフト制とリモートワークの導入を投票で決めたときでした。彼らによれば、同時に全員で働くのはリソースのボトルネック(利用する設備)があって難しいとのことでした。設備が拡充するまでは、午後1時から3時までだけオフィスにいて、それ以外の時間は個々人に任せるということにしました。私は心配しました。効率的に働けるだろうか。そもそも働くだろうか。コミュニケーションへの影響はどうだろうか。会社の方針に反しないだろうか。
設備の拡充は5週間以内に行われる予定でした。私は深呼吸して許可を出しました。
設備の拡充は早めに行われました。しかし、私たちはルールを1年以上維持しました。うまくいったからです。チームのメンバはベストを尽くし、期待以上の成果を出しました。内部での作業スケジュールを作成してコミュニケーションとリモートでの共同作業を支える新しいツールを導入したのです。異なる時間帯の他のチームは、彼らがいつもすぐに反応してくれることに喜びました。リソースの埋め合わせの解決策となり、さらにチームの中に大きな信頼性と積極性を生み出したのです。
エクササイズ2: 状態の評価
このエクササイズの目的はチームの現在の状態を定義し先に進むための計画を作ることです。
このエクササイズは振り返りに向いています。チームの構造の変化やデリバリや協力に関する課題について風通しをよくするのに使えます。いくつかのスプリントを経たあとにチームがなんらかの改善に気づいているかどうかを検証するために評価を繰り返すとよいでしょう。
フェーズ1: 自分たち自身について聞かせる
制限時間: 5分
“今日のチームの天気は?”と、質問をします。言葉で説明して質問しても、晴れ/曇り/雨/嵐/雪のような画像を用意するのもよいでしょう。どれかひとつを選んでもらい、選んだ理由を説明してもらいます。こうすることで自分の考えを表明することを促進します。返答は雰囲気を要約したものになるでしょう。すべての答えを受け入れ審判をしてはいけません。“空調が壊れているので凍る”とか“新しい機能でユーザーから良い評価を受けられそうなのでうららかな春の日みたい”という言葉を聞くでしょう。
フェーズ2: ステージを用意する
制限時間: 20分から30分
次のようにエクササイズの目的を説明します。
この振り返りの目的は今の働き方を評価し継続的に改善する機会を探ることです。そのひとつの方法が仕事の質を評価することです。プロダクトの質ではありません。仕事の質はふたつの要素でできています。生産性と肯定的な性質です。私たちがチームとしてどのくらい生産的で肯定的なのか探ってみましょう。
生産性は仕事の効率さです。目的を達成しているか。優れた製品を生み出しているでしょうか。
肯定的な性質は仕事への取り組み方を測ります。仕事を楽しんでいるか。雰囲気が好きかどうか。
下の図はこのふたつの要因のあり方を示しています。
説明の後、フロアを2次元の格子に区切ります。粘着テープで軸を作るか、部屋のコーナーにラベルをはります。創造性を活用してください。重要なのは物理的に動く必要がある明確に区切られた領域を作ることです。チームメンバをロールプレイに招きます。それぞれの領域での振る舞いについての情報を集めるのが目的だということを説明します。
チームのメンバに、ポジションAに移動してもらい、そのポジションの視点でその領域が決める通りの振る舞いをするように伝えます。そのポジションを吸収するための時間を与えてください。どのように感じるか、仕事をどう理解するようになるか、新しいメンバがチームに加入したら何が起こるか尋ねます。チームの全員に話してもらいましょう。
次に新しいポジションに移ってもらい、ポジションB、C、Dの順にエクササイズを繰り返します。
フェーズ3: 情報を集める
時間: 5分
上の図と同じ図をボードに書きます。そして、チームのメンバに次のような評価を記入してもらいます。
- 今、自分たちがどこにいるか、つまり自分たちのチームの現在の状態
- これからの2つから3つのスプリントで自分たちがどこにいたいか。つまり望ましい状態
そして、ひとつ前のフェーズでの自分たちの説明を振り返ってもらいます。
ポストイットを使って匿名で情報収集してもよいかもしれません。
フェーズ4: 洞察を生み出す
時間: 30分
前のフェーズから成果を探ります。現在の状態と望ましい状態がもっとも離れているところにフォーカスします。
チーム中で現実の状態と望ましい状態についての評価が整っていないことが観察されるかもしれません。チームメンバの間で大きな意見の違いがある場合は、そこを集中的に議論します。意見と期待を話してもらいましょう。
次は実例です。
スクラムマスター: Ann、あなたは私たちの生産性は低い、と評価しましたね。一方でTomは真ん中よりも上に評価しています。どのような考えに基づいて評価をしたのか教えてください。
Tom: 私たちの速さはまだ成長中です。今回のイテレーションでは前よりも3つ多いのストーリーポイントを提供しました。これはすごいことだと思います。
Ann: 私もそう思います。でも単体テストのカバレッジ率は落ちています。自動機能テストも作れていません。この領域での技術負債が増え、すぐにでも支払いをしなければならないと恐れています。ひとつの側面だけに注目した結果、他を忘れている状態で、これは働き方の取り決めに合致していません。
スクラムマスター: 「完了」という言葉によって定義されるものを満たすことが重要ということでしょうか。共通の理解に達するために詳しく議論してみましょう。
チームが現在の状態と望ましい状態について合意していてもそのふたつに大きな隔たりがある場合もあります。このような場合は新しい状態に達するためのアイディアを作り出す議論に注力します。
ブレストや他の創造的な方法を使ってみましょう。スクラムマスターが“この表では生産性はほとんど望ましい状態に近いが、肯定的な性質のレベルはもっと高くする必要があります。チームの精神を改善するためのアイディアを出し合いましょう。今のステージではどんなアイディアでも良いと思います。アイディアを批判するのはやめましょう。新しいアイディアの修正や既存のアイディアとの重複も自由です。”
フェーズ5: 何をするのか決める
時間: 10分から15分
すべてのアイディアを書き出して重要度順に並べます。サイレントソートやドット投票で順を決めてもよいでしょう。最も重要な3つのアイディアを取り上げて次のスプリントで試してもらうようにお願いします。実行するための計画を作りましょう。
結果
このエクササイズはアジャイルの調査と適用についての原則と繋がっています。スクラムチームは具体的なアクションと成果の視点から調査と適用のプロセスに注力します。このエクササイズはチームの環境を大局的に把握するのは役に立ちます。また、現在の思考パターンを超えるように促すにも効果的です。このエクササイズで生まれたアイディアは“良い点と改善点”の単純な結論とは異なります。議論に今まで経験がたくさん持ち込まれるからです。
また、チームが全ての状態を表す領域を歩き渡り、最後にハイパフォーマンス領域にたどり着くという動きがこのエクササイズで重要な部分を締めます。変化の動機となるビジョンを作るのに役に立つのです。
あるチームががポジションDに立ったとき、ひとりが“アベンジャーズがこの状態に似ていると思う。アベンジャーズになりたくない?”と言いました。チームはこの考えを好みました。“アベンジャーズ”が正式な名前になり、チームのメンバはこの映画からキャラクターを選びました。日常から離れて考えるツールとチームを結びつけるための糊を拾い上げたのです。“この問題をアイアンマンみたいに解決しよう。” “なに、このストーリーは13ストーリーポイントより価値があるのか。マイティソーのハンマーより重いなあ。” お気に入りの映画のキャラクターと状況や振る舞いと比較すると自然に問題解決に対する土壌が生まれます。このチームには平和な環境が必要ではなかったのです。達成へと推し進めてくれる定期的な緊張を彼らは楽しんでいました。
他のチームでは、誰かが “恐ろしいことです。私はあるチームのA領域で働いていました。そのときは働くのがいやでした。お互いに話さず、マネジメントは成果を急かしました。チームとして働くことに責任があるのではなく、単なる個人の集まりでした。私はアイディアを共有するはありませんでした。盗まれるからです。またこんな状況になったらすぐに辞めます。” このような場合は怖さと不満を共有することで雰囲気が晴れます。この段階の場合、私はAとBとCとDのそれぞれの状態のチームで働いた場合についてメンバに尋ね、過去のプロジェクトをすべて振り返ります。これをやるには現在のプロジェクトに戻って話を進めるための優れた調整スキルが必要です。そうでないと振り返りを殺してしまいます。
またアンカリングで判断がゆがんむ場合もありました。最初の人の投票と似た投票を皆してしまうのです。匿名での投票のほうが安全でしょう。影響力の強い人(どのチームにも非公式なリーダーがいます)に最後に投票してもらうのもよいかもしれません。
私の経験では、チームは多くの場合、肯定的な性質については合意します。説明が難しいことは感じやすいことでもあるのです。チームに衝突がない限り、肯定的な性質はチームが改善のために選択する最初の領域にはなりません。選択は常にチームのものでなければなりません。
生産性が議論になると、ポジティブでないやり方で細部が議論される傾向があります。次のような言い訳を聞くこともあるでしょう。“私たちの失敗ではありません。要求が不明瞭だったのです。” “道具が貧弱です。” “Johnが本線を壊してしまって、病気になってしまい3日も直さなかったからです。” “未経験の領域なので遅くなってしまうのです。”
このような状況は素早く是正する必要があります。私はこのような振る舞いは明確に否定します。“批判や言い訳が聞こえるけど、それは私たちの目的ではありません。こういう状況が心配なら、変えるために自分が何ができるかを考えましょう。” 1度や2度、そのような指摘をすると、より建設的な議論をするようになります。“よし、次によくわからないことがあったら、チームに質問するかプロダクトオーナーに聞いて、実装の前に明確にするようにしよう。” “ビルド環境を更新する必要があるかもしれません。有益ならビルドと基本的なテストにかかっている時間の統計をだせます。” “Andrewとペアプログラミングしてコードの理解を深めることもできますよ。”
もし、ネガティブな発想に深くとらわれて考え方を変えられないようであるなら、中断して活力が生まれるようなエクササイズをして雰囲気を盛り上げます。そのような沈鬱な状態ではどのような計画でも実行できないと思うのです。
それぞれのチームが望ましい状態と望ましい働き方を持っている、ということを学びました。私は高い生産性と肯定的な性質が備わった状態は全ての人の目標になると考えていましたが、それは正しくありませんでした。AとBの領域が望ましい状態であると考えるチームもあったのです。そして、そのようなチームはいくつかのスプリントの後、さらに先へ進もうという決心をしたのでした。
エクササイズ3: 価値の再評価
このエクササイズの目的はチームの価値が変わったどうかをチェックすることです。
前回の振り返りの後のフォローアップに使えます。
フェーズ1: チーム自身に聞く
制限時間: 15分
働き方の取り決めやチームの価値を示して、それぞれのメンバに自分にとって特別に重要なものをひとつ選んでもらいます。そして、その選択についてコメントをもらいます。
フェーズ2: ステージを設定する。
時間: 5分
このエクササイズの目的を次のように説明します。
振り返りの目的は私たちの成果や態度が正しい方向に向けっているかどうかをチェックすることです。
生産性は仕事の効率さのことだということを思い出してください。目的は達成しているでしょうか。優れた製品を生み出していますか。
肯定的な性質とは働き方の態度の尺度です。仕事を楽しんでいますか。雰囲気は好きですか。
以前、自分たちがどこにいるのか評価しました。そして、望ましい状態を選びました(エクササイズ2でチームが評価した実際の状態と望ましい状態を示します)。現在の状態をこの図に加えます。
マーカーを配ってチームに新しい点を追加してもらいます。さらなる評価が必要な領域をチームと一緒に調べます。“前回評価したときと比べて肯定的な性質は改善しているように思います。しかし、生産性はわずかに悪化していると思います。今日はこの点にフォーカスしたいですがどうでしょうか。”
準備をしてください。チームがどのような選択をするのかは予想できません。彼らの考えに従うだけです。
フェーズ3: データを集める
時間: 30分
選択された領域のコンピテンシーをレーダーチャートにします。一番簡単な方法は部屋に紐やテープなど、部屋をいくつかの領域に区切れるものを使うことです。上で一覧した生産性と肯定的な性質の要因を使ったり、エクササイズ1で作ったチームの価値を使うのもよいでしょう。私は普段は、生産性と肯定的な性質のどちらかの価値を選択しますが、ふたつの混ぜて考えてもよいと思います。シートにこれらの要因を書き、下の画像のようなそれぞれのフィールドに配置します。“?”フィールドを必ず追加しましょう。要因の一覧は完璧ではありませんから。
チームのメンバにそれぞれのフィールドを歩いてもらい、それぞれの要因が何を意味しているのか思い出してもらいます。
チームの強みを探しましょう。次のような質問が使えます。
- “どの要因が強みだと思いますか。”
- “チームの最大の資産はどの要因なのでしょう。”
- “一番改善した領域はどこでしょうか。”
- “どの要因に一番高いスコアをつけますか。”
チームのメンバに選んだフィールドに立ってもらいその考えを話してもらいます。必要なら質問してより深く理解します。例えば、“この改善によってどんなよいことがありましたか。”クエスチョンマークのフィールドは一覧されていない別の領域を選びたい人に使われます。
そして、改善するべき領域を探ります。次のような質問が有効です。
- “どの要素が欠けていると思いますか。”
- “より良い成果をあげる助けになる領域をひとつ選択しなければならないとしたら、どれを選びますか。”
- “今、どの領域を改善したいですか。”
- “どの領域が一番低いスコアになるでしょうか。”
選択したフィールドにもう一度立ってもらいます。同じようにクエスチョンマーク領域も使います。
何が起きているか観察します。ひとつ、あるいは、多くの強み、弱みが見つかるかもしれません。同じフィールドを弱みとして選択する人と強みとして選択する人がいるかもしれません。次のフェーズではそのようなフィールドにフォーカスします。
フェーズ4: 洞察を生み出す
時間: 20分
チームを先に進めるためのアクションの草案を作成します。例えば、スクラムマスターは次のように言います。
多くの人が結果に対する責任を強みだと選択しました。開拓するべき領域として積極性を挙げた人も多いですね。意思決定は強みとも弱みとも感じているようですね。
この3つの要因に絞って、これらを使ったり、これらに影響を与えるようなアクションの草案を二人組になって作ってみてください。ポストイットに書きましょう。
もちろん、チームがやりやすい方法ならどんな方法でも構いません。すべての草案について議論します。
フェーズ5: 何をするのか決める
時間: 10分から15分
議論した草案を重要度、可能性、投資効果の順で並べます。サイレントソートドット投票を使ってもよいでしょう。最重要のアイディアのうち3つを選び、次のスプリントで試してみるのはどうかチームに尋ねます。実施の計画を作りましょう。
結果
ふつう、少なくともひとりはクエスチョンマークを選ぶ人がいます。
フォローアップとしてこのエクササイズをする場合、一緒に働いてきた期間がより長いチームのほうが難しい点に触れます。私は次のようなことを聞きました。/p>
- 信頼 — “信頼が壊れていると感じています。最後の振り返りで実装したストーリーを見せましたがまだ治っていないバグについては言及されませんでした。これには良い感じはしません。”
- 意思決定 — “私たちの意思決定は上手くいっています。うまくいき過ぎかもしれません。この昨日の限度について決める必要があるとは思いません。プロダクトオーナーが決めるべきでしょう。”
- 目的 — “私はプロダクトのビジョンと協調できていません。このプロダクトが成功するとは思えないのですが、誰も私の懸念点を聞いてくれません。”
これらの問題に対処する必要があります。素早く対処できない問題やひとつの会議で議論できない問題かもしれません。私はひとつの振り返りでひとつ(あるいはふたつ)の領域を取り上げるようにしていますが、問題はすべて記録して引き続き振り返りでひとつずつ取り上げます。このエクササイズでは隠れていた対立や幻滅に光が当たることがあります。私は振り返りの間、チームに関連のある対立や幻滅だけにフォーカスします。しかし、それ以外のことが重要ではないということではありません。それぞれ別々に扱います。何か派手なことを言えばよいだけの場合もあります。チームを去りたいメンバがいるということを明確に言わなければならない場合もあるでしょう。
終わりに
チームの価値を扱う場合、チームは生き物であるということを忘れないようにしましょう。チームは絶えずに進化します。それは素晴らしいことです。チームと共にいましょう。そして変化を楽しむのです。スクラムマスターとして飽きることはないでしょう。準備して、起きる出来事にはオープンに望みましょう。あなたが見つけた価値はあなたがその価値に賛同する限り、正しい価値なのです。
参考
- Blake, R. and Mouton, J. (1985). The Managerial Grid III: The Key to Leadership Excellence
- Derby, E. and Larsen, D. (2006). Agile Retrospectives: Making Good Teams Great
- Whitworth, L., Kimsey-House, H., and Sandahl, P. (1998) Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work and Life
- Team Diagnostic.
- Examples of icebreakers and energizing activities:
About the Author
Justyna Wykowskaはアジャイルのトレーナーであり、ProCognitaのコーチとして、チームや組織レベルで顧客を支援しています。技術の学位とソフトスキルの教育と実務を組み合わせ、組織とチームのダイナミクスの中での協力とコミュニケーションを力説します。また、2005年以来、大規模な公衆安全プロジェクトでは多次元の分散されたチームを率いています。リーンと伝統的なプロジェクト管理双方の幅広い知識を活用しながら、自己組織化しようとしているグループを支援し、アジャイルの原則を理解しエンジニアリングの成果の最適化やスケーリングへの準備ができるようにチームを強化します。