チームの成功を祝う時、サーバントリーダ(servant leader、奉仕型リーダ)の果たした役割に対する認識あるいは理解のないことが少なくない。彼らの活動が資料に残っていなかったり、他のメンバから見えなかったりする場合があるからだ。このような孤独な状況を避けるには、サーバントリーダをサポートするネットワークを構築して、自分たちの行動を共有し、成功を称え合い、活動とその方法についてブログを書き、自分たちの成果をマネジメントに対してアピールする、という方法がある。
Holiday ExtrasのアジャイルコーチであるNick Loe-Startup氏は、3月29~30日にロンドンで開催されるAginext 2020で、孤独なサーバントリーダになることを回避した自らの経験について講演を行う予定である。
Loe-Startup氏によれば、よいサーバントリーダはチームから頼られる立場にはならない。まったく逆に、チームの自律性と自己組織化を向上し、自らを必要としない位置にまで到達させることがサーバントリーダの目標とするところなのだ。ゆえに、チーム内でひとりきりで活動しているので、本当の意味でチームの一員には決してなれない。
企業内のピアサポート(peer support)グループは別として、Loe-Startup氏が勧めるのは、カンファレンスに参加してネットワークを作ること、さらに、もし機会を得られるならば、サーバントリーダの本当の意味でのやりがいとも言える成功やチャレンジについて講演をすることだ。自分のやっていることに価値を見出し、同じような志を持つ仲間とストーリを共有する上で、それが役に立つ。
自分がやってきたことを量的データと質的データの両面で評価する方法を見つけるのも、同じように役立つはずだ。Los-Startup氏は、上層部のステークホルダにアピールする手段として、自身のアウトプットをドキュメントとして実体化しておくことを提案する。自分がどれほど多忙なのか、チームやビジネスにどれほど影響を与えているのか、といったことは、これを裏付けるデータがあればずっと簡単に示すことができるからだ。このデータを定期的に見直せば、自分が最も影響力を持つ領域に対する具体的なエビデンスにもなる。
InfoQはNick Loe-Startup氏にインタビューして、サーバントリーダシップとはどのようなものなのか、孤独を避けるということ、サーバントリーダはいかに貢献し、何を達成するのかという問題に対する洞察などについて聞くことにした。
InfoQ: サーバントリーダの1日はどのようなものなのでしょう?
Nick Loe-Startup: 通常は1対1の会話に関わっていることが多くなっています。主体はコーチングですが、他にも必要があればメンタリング、トレーニング、カウンセリングなどを行います。チームのパフォーマンスを改善するのと同じスキルを使って、チームセッションを促進することもしています。私自身は最近、Jiraレポート(スプリント報告、バーンアップ、累積フロー)や、チームやオブザーバとの議論を基にした定量的情報などのデータを使って、チームの潜在的な問題領域を特定する作業もしています。そのような領域において、私たちの経験やコーチングを活用することで、改善に向けた調査や実験の実施をチームに促すのです。
利用可能なツールについては常に注意を払っていますが、最近ではチームに対する集中的なサポートからは一歩退いて、十分に活用できていないデータへの注目に時間を費やしています — 例えば、 スプリント報告からベロシティの変動に関する懸念を見出したり、バーンアウトチャートを通じてスコープクリープ(scope creep)の可能性に注目したり、累積フローからボトルネックを発見したり、といった作業です。
InfoQ: あなたがチーム内でひとりで活動していたように、サーバントリーダシップは孤独に陥りがちですが、これを避けるにはどうすればよいのでしょうか?
Loe-Startup: サーバントリーダシップは定常的な評価を求める人たちのための役割ではありません。サーバントリーダの行う仕事の多くは裏方に当たるもので、他の人たちやチームが結果を出すための基礎になります。日によっては、必死にやった仕事の結果が、実際にはまったく非生産的なものに感じられることも少なくありません。
私はこのような役割からくる孤独感を、サポートネットワークを構築することで回避しています。幸運なことに私はいつも、同じようなサーバントリーダシップの役割で働く人たちと一緒に仕事をしてきました。仲間たちと定期的にチェックインすることは、私に新たな達成感を与えてくれます — 彼らは小さな部分で私の目標達成に関わり、私自身が気付いていないことに気付かせてくれて、新たな挑戦への意欲を掻き立ててくれています。私は自分の成功についてブログを書き、カンファレンスで講演することで、ネットワークを社外に広めてきました。自分が常に向上していることを確認するために、自分の成功やチャレンジについて語りたいのです。
InfoQ: サーバントリーダがどのような貢献をしているのか、何を達成したのかをもっと認識してもらうためには、何をすればよいのでしょうか?
Loe-Startup: これに関しては、自分が納得できる状態になるまで、かなり時間がかかりました。私はよく、"今日は実際に何をしたのか?"ということを考えます。先程説明したサポートネットワークは、自分が1日あるいは1週間で達成した成功やチャレンジについて語る上で、よいサニティチェック(sanity check)になってくれます。私は1日の大半を人と話して過ごすことが多いのですが、そのような会話を通じて、多くの人たちにソリューションをコーチしています。
ごく最近のことですが、Web Team Leadership Groupの活動の一環として、これらの成功を要約するデモを、ディレクタのひとりを対象に始めました。デモには当社のリーダ(ラインマネージャ)やチームの責任者も参加して、Web TeamのOKR(Objectives and Key Results)に対する貢献や、2週間のピリオド中に行ったその他の貢献を取り上げます。特に重視されるのは、報告書の確認、ドラフト資料/プレゼンテーション/トレーニングマテリアルのレビュー、直近のおもな課題についての議論などです。ここは私たちが行っていることを見せる場であること、私たちが参加したミーティングの一覧ではなく、私たちが果たした重要な貢献についての詳細をアピールする機会であることを、ディレクタは十分に理解してくれています。
さらに私たちは、チームにチェックインした時に評価を行う基準や、サポートや改善すべき分野を特定できた場合の成功の評価値、定常的なチェックイン、改善すべき分野において"レーティング"を向上できたこと示す評価方法なども決めています。これらは自律性やレジリエンス、リーダーシップ、モチベーション、モラル、フィードバックの文化、振り返りの頻度、プロセス品質、リモートを優先する考え方(当社では重要です)、利害関係者の満足度から始まって、もっと定量的なベロシティや累積フローやバーンアップといったデータ、さらにはスコープクリープ(scope creep)のようなトレンドを示すものにまで及びます。このような文書化の進んだ数値は、私たちがチームに対して、ひいてはさらに広範なビジネス成果に対して与える影響力を明確なものにしてくれるのです。
InfoQ: サーバントリーダになったことで、何を学びましたか?
Loe-Startup: サポートを行って結果としての成果や成功を見ることには達成感もありますが、何よりも必要なのは、他人の成功から満足感やモチベーションを得られるような人間に自分自身がなる、ということです。他者の成功は自分の成功でもあるのですが、自分の行ったことについては広く認知されない場合がほとんどです。私はそれで構いませんが、誰でもそうであるとは限らないでしょう。何よりもサーバントリーダは、優秀なコーチでなければなりません。それは私がスキルセットとして取り組まなくてはならないものですが、非常に重要です。
InfoQ: サーバントリーダに対して、何かアドバイスはありますか?
Loe-Startup: サーバントリーダの成功は些細なものであったり、過小評価されることが少なくないでしょう。ですから、それを祝福する方法を見つけなくてはなりません。私自身が行ってきた方法をいくつか紹介しましたが、もっと他の方法を行っている人がたくさんいるはずです — その人たちの話をぜひ聞きたいのです!私たちのサイトを通じて、私に連絡してください。このサイトは、チームのセルフサービスを支援することを目的とするもので(アジャイルな方法で作業することのメリットも広く理解されています)、その詳細はこのブログ"Developing High-Performing Teams at Holiday Extras"で詳しく解説しています。