アジャイルの世界にいる非常に多くの人たちが、自己組織化したチームや自己組織化の価値について熱心に語っています。それでもまだ、自己組織化を次の段階へ進ませようとする人はほとんどいません。次の段階とは、マネージャ、コーディネータ、親切な先輩がいなくても、実際にうまくいく段階です。要するに、あなたを含めて、仲間に対して何をすべきか言う人がいない状態になることです。これには理由があります。自己組織化は楽なことではありませんし、なかなかうまくいきません。そのことをみんなが知っています。/ut7の私たちは、自己組織化についてよく知っている訳でもなく、自己組織化が当たり前だと思っているのでもありませんでした。だから、私たちは自己組織化を試してみました。これは本当に起きたことです。そして、私たちは、自己組織化と人生について大切なことを学びました。
すべては2011年7月に始まりました。/ut7で働く私たちは、会社を買い戻し、協力的なビジネスへと変化させました。あるいは、おそらく、それはもっと早く起こっていました。2010年には、いつもオープンスペースがある会社を非難する人もいました。もしかしたら、もっと前かもしれません。自分たちの知っていることや信じていることを会社レベルで広めたいと考えるアジリストたちを雇っていたこの会社について、私たちは聞いていました。ずっと確かなのは、自己組織化した構造の中で、いつ、どこで物事が始まるのかは分からないということです。
/ut7は訓練を積んだアジリストの集団であり、ソフトウェアプログラミング、製品定義、チーム力学、自己組織化の分野で、しっかりとした専門技術を持っています。私たちのクライアントは、私たちがどんなに見込みのないケースでも、動くソフトウェアを定期的に遅れることなく納品するやり方を気に入っていて、もう一度、私たちと仕事をしたいと言っています。そして、私たちのトレーニングを受けた人たちは、トレーニングに戻ってきます。彼らは、コードを書くプロフェッショナルな人がどんな人たちかを考えた時に、私たちが期待以上のことをしようと誠心誠意取り組むことを知っているのです。また、ここには無料で解放されたスペースがあるので、私たちの友達が集まってきます。それは、多分、私たちが良い人たちだからです。それに、冷蔵庫にはいつもビールがありますからね。
私たちの会社は、完全に働く人たちに属しています。会社は、会社の将来について決めるかもしれませんし、自分たちの仕事によって生み出された利益の実質的な部分を享受しています。しかし、会社が、会社自体の価値で投機をしたり、株を売って利益を得たりすることはありません。
/ut7は、自己組織化の原則に基づいて堅実に運営されている、珍しいIT企業のうちの1つです。しかし、会社レベルで自己組織化しているとはどういうことでしょうか? 基本的に、会社にいる個人個人の自由意志によって、会社が組織化されているという意味です。みんなが目的を達するために協力することを自由に選ぶ状態です。このことについて、さらに詳しく見ていきましょう。
2本足の法則
自己組織化に関する私たちの中心となる解釈は、Open Space Conferenceにいる間に感じられる状態です。2009年、私たち3人は、Open Space Conferenceのオーガナイザとしての経験がありました。少なくとも1回はOpen Space Conferenceを経験している人たちもいたので、この解釈が当然のように基準になりました。ここで、オープンスペースにいるように感じたいならば、職場でも同じフレームワークを使ってみましょう。
経営上のタスクやクライアントの作業をすることも含めて、一般的なすべてのミーティングと活動は、みんなが知っています。誰でも参加したり、オブザーバの役目を果たしたりできます。活動やミーティングはどれも強制ではありません。やったことに価値がある一方で、私たちがもっと価値があると気づいたのは、誰もやりたがらないことに対して何か合図を受け取ることです。その合図によって、私たちはこの道を進むべきではないことが分かります。そうすることで、重大であってもそれほど満足を与えないタスクは実行されずに残るので、長期的にみれば私たちに害を与えることも、もちろんあり得ます。一方で、私たちがグループとして会社を機能させたいかどうか、度々確認する助けにもなっています。私たちがここにいる限り、私たちはまだグループとして動こうとしていることを意味しています。
クライアント、パートナー、そして、フランスの規則に対してコミットすることに確実に敬意を表するように、私たちはペアで仕事をします。このペアは、新鮮な目で見続けたり、個人のスケジュールに合わせたりするために、できる時はいつでも、定期的に交代します。ペアのローテーションは、管理上のタスクとクライアントの作業の両方で行っています。
1週間に1度、オープニング、市場のスケジューリング、クロージングのある正式なOpen Spaceを私たちは開催します。みんなに知らせる決定事項を決めて、情報を交換する前に、議論される必要があることについて議論するために、このOpen Spaceを利用しています。また、通常はプログラミング、執筆や作曲、大掃除、シリアスなゲームやそうでないゲームをすることのように生産活動の形をとって、その時に情熱を燃やしていることを共有するのに使います。時々、外部の人をOpen Spaceに参加するように招待します。通常は半日程度で、個人的なことを議論する時間もあります。
私たちは、管理スキーマの中心に "The Law Of Two Feet" (2本足の法則)(または、Bipodocracyという人もいます) を置きました。つまり、あなたが今いる所にいて、今していることをする、これは、あなたが何かを学んでいるか、グループに貢献していることを意味するということです。
誰も怠けていないことをどのように確認したらいいでしょうか? 簡単に答えれば、私たちは確認するようなことはしません。(もっと長い微妙な答えを言うと、他人に対する深い信頼やコミュニケーション、健全な期待に基づくということです。) 私たちは、誰でも全力を尽くし、会社に良いことをしようとすると信じています。他の人よりも働かない人がいると、"彼の能力からしたらお互い様だ" と言います。これは、時々いらだたしいことです。このことによって、落胆する人もいます。そして、人よりも多く働いて、同じ給料をもらうことを受け入れるよりも、グループを去ることを選ぶ人もいます。しかし、この状態をうまく扱えれば、他の人が稼ぐか稼がないかに関わらず、自分のすることにますます幸せを見出すでしょう。
あなたは私のボスではない
私たちの会社に、マネージャはいません。長期的な方向性は、まとめて合意されています。合意が得られなければ、選択肢について議論し続けます。短期的な決定事項は、やる人が決めるという原則に基づいて対処します。やる人は、何をやるか、どのようにやるか、いつやるか、どのくらいの期間、どのくらいの金額かを決めます。その作業に参加していない会社の他の人たちは、他の手法やより高い生産率、よりよい結果を望むかもしれません。そのような人たちは、不満を表したり、別の見解を示したりするかもしれません。しかし、他の人に何をしなければならないかは誰も言えません。おそらく行動のコースを変える唯一の方法は、そのタスクに参加することです。
どちらが大変なチャレンジでしょうか? 手元にあるもっとも重要なタスクだと思うことをするか、他の人がしている間違ったことを直すか、絶えず板挟みになりながら、どうやって物事を終わらせますか? 失敗が会社に影響を与えるかもしれない時に、何か新しいことを試そうとどうやって決めますか? あなたに何をするか言う人がいない時に、どうやって選択しますか?
/ut7では、みんな会社の財政状況を知っているので、作業の優先順位に関して、誰でも情報に基づく決定ができると私たちは信じています。私たちは会計帳簿を公開する方針をとっています。/ut7で働く人は誰でも、自分たちがどのくらい稼いで、どのくらい経費を使ったかを確認できます。そして、将来の支出と収入の保守的な見積もりを調べられます。これは、もちろん、給与も含みます。自分たちが適切だと思い、それに応じて行動する評価基準が何であれ、これらの数字からどうするかは自由です。ここ2年間、一貫して測られ、公表されて来た唯一の指標は、お金を使い果たして立ち去る時は、新しい契約にサインすべきではないということです。
ここであなたはこう言うでしょう。調和のとれた行動はないのですか? 共通の目的は? 共有するビジョンは? ここの人たちは、会社が財政的にどれほど健全であるかを自分自身で解釈し、それに合わせて、ただ行動するのでしょうか?
その通りです。私たちは、ビジョンを共有したり、共通のゴールを持ったりすることをあきらめました。そのようなことは、過大に評価されすぎていると感じるのです。もちろん、共有されたビジョンがあれば、かっこいいし、何でもスピードアップできるでしょう。しかし、共有するビジョンを実践する自己組織化したグループを作るのは、みんなを傷つけることになります。私たちは様々な方法で何度も何度も試してきました。長期的なゴールの形で、何をするか、そして、どこへ行くかを言ってくれる上司がいる環境では、共有するビジョンを持つのは簡単です。しかし、何も制限がない場合、物事は厳しくなります。あなたにとって何がもっとも大切なのかを話し、他の人たちにとって大切なことを受け入れるために、もっと自分をさらけ出す必要があります。これは、恐ろしいことです。あなたは、自分の脆弱性をさらし、他の人たちがその脆弱性を利用しないことを信じなければなりません。これは、スイッチをクリックしただけでは起きません。傷つくことを恐れることが障害でなくなるまで、これを実践しなければなりません。共有するビジョンをグループであわてて持とうとすれば、"クライアントが気に入って、喜んで買ってくれる素晴らしいことをしたい" というような決まり文句が出てくるだけで、みんなの士気は下がるでしょう。
私たちが一番驚いたのは、共有するビジョンがなくても、自己組織化した会社は実際に機能すると分かったことでした。誰でも2本足で進める場所がある限り、そして、会社が存在し続ける限り、何が必要だというのでしょうか? そうして、共有するビジョンに注目する代わりに、私たちは、誰でも自分のやったことから肯定的な結果を得られるように注意するようになりました。これは時間のかかるプラクティスですが、自分たちで定義するのが難しい長期的なゴールを設定するよりも、ずっと効果的だと証明されてきました。
けれども、これはまだ危険な道です。経営危機の時には、個人個人の財政的な貢献を見たり、"個人のレンタル料"を比べたり、"十分な努力"をしていない人たちを見下したりしがちです。私たちはかつてそのような状況にいたことがあり、それで険悪なムードになることもあり得るのです。主な問題は、個人が実際に貢献している金額を測るのは簡単ではないことです。そして、団結について話すのはかっこいいことですが、団結と共に生きるのは難しいでしょう。このことは、簡単には答えられません。教育、忍耐、そして、コミュニケーションが助けになります。平等な給与も助けになります。ペアで働き、ペアを交代するのも助けになります。それでも、時には十分ではなく、誰かを手放さなければならないでしょう。他の人の不満を受けて、その不満に一生懸命対処するのです。人生と同じように。
自分の道を見つける
自己組織化していると、自己組織化にたどり着き、そのままでいることには、予測できる解決策がないことが分かります。自己組織化した構造の中では、大抵、他の人にとって的はずれだとしても、自分たちに合っているプラクティスを見つけ出す必要があります。これは、あなたが考えても、驚くべきことではありません。自己組織化したチームがもはや自己組織化しなくなった"その" やり方があるならば、正しい知識を持った専門家たちの声や書物に単に従っただけだったのでしょう。
私たちは、社員3名で始めて1年後には13名に増え、それから約2年で4名に戻りました。13名で自己組織化した会社を経営してみてください。どれだけめちゃめちゃな状態になるのか分かるでしょう。自己組織化は途方もなく大変です。その大変さの一部分は、誰かと意見が異なる時に、間に入って、どうやって意見の相違を解決するのか教えてくれるマネージャがいないことです。"自分の立場を守って、他の人を見向きもしない" ことになりがちです。それでも、みんな一緒に会社をやっていかなければなりません。ちょっとした意見の相違には目をつむりながらも、他の人がすることが会社の将来を危険にさらしていると思う時にそれを無視するのは、ずっと大変です。十分皮肉なことに、他の人があなたのことを同じように考える機会も多いでしょう。"最悪なのは他の人たちだ。" 他の人たちがすることがあなたをうんざりさせている時に、その人たちをただ無視することはできません。その人たちを止めることもできません。
自分の全力を尽くす十分な余地がないと感じる人もいました。そのような人たちは、会社が目指している方向に自分は進んでいないと感じることに懸念を示しました。これには、注意を要します。あなたは、みんなの情熱に配慮したいけれども、自分自身のスタミナを失わずに、そうするのは難しいでしょう。結局、会社と同じ方向に向いていないと感じる人たちは、クライアントの仕事場で時間を過ごしたり、自宅で働いたりすることを選んだ人たちでした。そのため、働く人たちの中心となって、活発に連絡を取り合い、コミュニケーションする人たちと、その周辺にいる人たちとの関係は、アンバランスなものになりました。私たちは、これを自分たちで作り出したループだと考えました。このループによって、自分たちの声を聞いてもらえないと感じる人たちと連絡をとるようにするのは、ますます難しくなりました。それから、私たちは少なくとも1週間に1日は、直接会ってコミュニケーションをとるようにしました。
こうして、不満がなんであれ、克服できると信じる何人かは残りました。そして、私たちは実際にどこかにたどり着きそうです。2本足の法則は助けになります。Open Spaceは、まだ始まったばかりです。私たち4人は、プラクティスのコーチングや、大抵はVirginia Satirのシステムから来た治療用ツールの実践的な経験を持っています。この経験は、私たちが同僚と難しい会話をすることに直面する手助けになります。私たちが毎週使うのは、Temperature Reading(温度の読み取り)です。これは、あなたが気にしていること、真価を認めること、怒りや心配、混乱、新しい事実、うわさ話、希望などを表現する助けとなるだけでなく、他の人たちが非常に気にしていることを力強く表現することの助けになります。それを反映して、あなたは自分自身の生き生きとしたさまに触れることができます。
もちろん、これはそう見える程バラ色ではありません。あなたは何が得意か、何をしたいか、どうやってするつもりかをまとめて見つけ出すには、非常に時間がかかり、すぐに経営が苦しくなります。約1年前、私たちはフランス版の破産コード11章を提出しました。それは、会社を買い戻して、6ヶ月後のことでした。私たちは、自己組織化していると思っていましたが、ほとんどお金がなくなっていました。
それでは、それほど自己組織化しようとするのはなぜなのでしょうか? 少なくとも私たちのような人たちにとって、自己組織化とは、自由、責任、団結、自己改善のような自分たちの価値に従って仕事をしていくことです。あなたがこのようなタイプの人ならば、実際の仕事環境の広大な気味悪さの中で、自分自身が健全な場所にいることが分かり、あなたを理解する人や、あなたが信じ、自分を成長させられると思う人たちを見つけることが自己組織化の目的になります。健全な仕事環境があり、お互いに助け合い、いろいろ試したり、失敗できたりできることが、あなたが会社に作り出してほしい主な結果になるのかもしれません。問題なのは、そうすることで、残りの経済的なシステムではそれほど価値がないものに対して、時間やお金、エネルギーを割り当てることになることです。あなたが素晴らしい製品を販売しているとしても、他の会社があなたを真似て、リソースの"より良い" 最適化によって、同じことをして、情け容赦のない競合相手になります。内部は温かく感じるかもしれませんが、外は冷たい世界なのです。
結論: あなたは急に伸びて、中身が現れる
破産を申請してから1年たちましたが、私たちは、まだその場所にいます。私たちのクライアントは、状況をよく理解して、私たちを支えてきてくれました。新しい人たちも、私たちのところにやって来ました。私たちは、結局うまくやっているでしょうか? これが結局は成功だったのか、いずれは通り過ぎる幸運に出会ったのか、それとも、何だか確かめられない惨めな悲劇だったのかを見つけ出すのは、いつでも大変なことです。あなたが自己組織化の道を進んでいくと、自己組織化はうまくいかないとみんなが言うでしょう。そう言う人たちが正しいと誰が言えるのでしょうか。しかし、人生だってうまくいくものではありません。いつも失敗し、それでも人が挑戦して全力を尽くすのを妨げはしません。だから、あなたは自己組織化した会社を作るために、挑戦して全力を尽くしてください。それでも、実際にうまくいくと他の人たちに話せるほど成功するかどうかは分からないでしょう。
結局、自己組織化は、あなたが達成したい目的ではなく、あなたの働き方や生き方です。これが、多くの生き方の中で唯一の生きていく方法であり、あなたはこれがあなたにふさわしいと、心の奥底で分かっているはずです。何度も何度も練習してください。そうすれば、いずれ練習でなくなります。それでも完璧ではありませんが、完璧さのために努力するのはとっくにやめているのです。あなたは混乱した状態や不安定で不満のある中で生きられることが分かるでしょう。
それから、何かびっくりするようなことが起こります。なんとか会社で同僚たちと問題を解決していることが分かるでしょう。あなたは手の届かないところにいると思っていた目的を達成したのです。自分の能力と自尊心にもっと自信を持ったはずです。あなたは勇気を持って誠実に難しい決断に直面します。あなたは、実は仕事へ行くために朝目覚めるのが楽しみになったはずです。仕事だけでなく、あなたの人生には意味があります。あなたにとって、そして、あなたの成長を支え、今では親近感のある友達たちにとって、大切なことをあなたはしているのです。恐れ、疑い、不確かさはまだ毎日ここにありますが、そのようなことは今ではなじみのあることになって、あなたが全力を尽くすのを邪魔することはありません。あなたは、自分自身、そして、チームの1人1人を誇りに思うでしょう。
そこで、あなたは考え始めます。普通の人で、能力とリソースが限られていて、トラウマを持っているあなたができるならば、他の人でもできるでしょう。現在起きている問題を自分の解決策で解決したり、自分たちの勝利や疑い、人間として生きていくことが何を意味するのかについて話したりしましょう。あなたは自分の経験を書いてください。それが他の人たちの刺激になり、その人たちの自己組織化につながるでしょう。ここを、最愛なる読者たちのこれから書かれるであろう、残りのストーリーの始まりにしましょう。
著者について、
Emmanuel Gaillot氏は、チームコーチ、エクストリームプログラマ、ファシリテータ、トレーナー、そして、システムを動かす人です。ここ10年の間、Emmanuel氏は、ソフトウェア会社が自分たちの作り出すものをより良く、より誇りを持って、満足できるようにする手助けをしてきました。また、アジリティに関する数多くのカンファレンスでスピーカーとなり、毎年行われるAgile Open France conferenceを中心となって運営しています。彼は、Coding Dojo in Parisの創設者の1人であり、今でも勤勉なメンバです。Emmanuel氏は、パリで、仲間の同僚たちとうまくやろうとしている協力的ビジネスを行う/ut7で働いています。現在、エネルギーと情熱を注ぎ込んでいるのは、外国語を学んで教えることと、自己組織化構造を具体化して、共同学習のスペースを作り出すことです。