Theodo UKの創業者でありCEOであるFabrice Bernhard氏は、Lean Digital Summit 2018で ”what lean can learn from digital natives(デジタルネイティブからリーンは何を学べるか)”という講演を行った。デジタルネイティブはリーンスタートアップやアジャイルプラクティスになじんでおり、彼らはアジャイルとトヨタ生産方式を結びつけ、アイデアの実験、イノベーションの展開、スケールの高速化を可能にして先へと進んでいく。
Google、Apple、Facebook、Amazon(GAFA)といったデジタルネイティブ企業は、トヨタを使った非常に効果的なマネジメントプラクティスを共有している、とBernhard氏は述べた。彼はトヨタの方針管理と似たOKRと、自律性を多分に備え、自己検査のためにビジュアルマネジメントを使い、自分たちの成長を組織に共有するアジャイルチームについて触れた。
デジタルネイティブ企業が持っているもの、トヨタのような伝統的な企業が持っていないもの、より高速なスケールに寄与するものとは、ソフトウェアのカルチャーとつながりである、と彼は述べた。典型的な成果とは例えば、継続的なプロダクトのアップデート(ソフトウェア更新)、組織外の人材を訓練し、惹き付けるためのオープンソースツール、組織内および、そのエコシステムとリアルタイムにコミュニケーションするための最新デジタルテクノロジーの利用など。このことがイノベーションを組織内および外の世界に速く展開することに役立つ。
リーンがわれわれに教えてくれることといえば、プロダクトの作り方を最も細かいレベルで検査することが、イノベーションの源であるということだ、とBernhard氏は述べた。イノベーションを加速しようとしている企業への彼のアドバイスは、ほとんどではないにしてもカイゼンをしている多くのチーム、すなわちアイデアを考え出すために非常に詳細なレベルで自分たちの働き方を検査しているチームで、このカルチャーを作ること、そして様々な方法で働き方を改善してみることである。そうすれば組織全体からイノベーションの流れが生まれるという。
イノベーションの流れがいちど生まれたら、組織内のソーシャルネットワークをセットアップし、同様のイノベーションのトピックを共有する”ギルド”の人々での定例会議を編成すること。イノベーションは、そこから利益を得られるチームに効果的に展開される、と彼は述べた。
InfoQはBernhard氏にインタビューし、リーンがデジタルネイティブから学べるものについて聴いた。
InfoQ: デジタルネイティブのアジャイルとトヨタのリーンは適合するでしょうか?
Frabrice Bernhard氏: 方針管理やビジュアルマネジメントといった、GAFAによるリーンマネジメントプラクティスの採用の成功は、デジタルネイティブがリーンカルチャーを受け入れることができると示しています。同様に、ほとんどのスタートアップがアジャイルの方法論におけるレトロスペクティブや日々の検査を重視することは、アジャイルがトヨタ生産方式まで遡った深いルーツを持っていると気付かせてくれます。それゆえ、最も困難な課題は、デジタルネイティブのアジャイルカルチャーとトヨタのリーンカルチャーを両方混ぜないことです;課題は、組織でまず第一に、それらを個々に採用することなのです。
InfoQ: デジタルネイティブのカルチャーとリーンカルチャーをどう混ぜたのでしょうか?
Bernhard氏: Theodoでは、アジャイルとリーンのプラクティスをそれぞれ採用し始めたら、すぐに両方のカルチャーをうまく混ぜる実験をしました。
最初の構想は、週次の顧客満足度調査(リーンにおける顧客の声)をスクラムボードに置くこと、指標が赤くなったらリーンの問題解決フレームワークを使ってスクラムチームを訓練することあたりにありました。これらの構想はチームが自律性を高め、より速くスケールするのに役立ちました。
最近の構想は例えば、典型的なスクラムのスプリントと並行してカイゼンの改善のために時間を作ることにあります。するとチームは伝統的なアジャイルチームと比べて、自分たちの働き方を分析して改善することにより多くの時間を作れるようになります。このことが、わたしたちはデジタルネイティブのカルチャーも持っているので、組織内のソーシャルネットワークやgithub上のコードリポジトリといったコミュニケーションツールを通じて、組織に極めて速く広がる、信じられないようなイノベーションにつながったのです。