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Toyotaの方針管理を適用する

原文(投稿日:2017/03/23)へのリンク

ToyotaはリーンITの更なる活用を目指し、その方向付けのために方針管理を利用している。あらゆるレベルの従業員が方針項目について意見交換を行うことが可能であり、上層部の承認を得る可能性もある。このアプローチによって従業員から多くの積極的な参加を得て、より強力な成果へと繋げることができる。

Toyota Motor EuropeのVP & CIOであるPierre Masai氏は、Toyotaでの方針管理についてLean IT Summit 2017で語った。InfoQはこのカンファレンスをQ&A、サマリー、記事で取り上げている。

Masai氏はまず「方針とは」という定義と、その定義を文化やリーンITのコンテキストでどのように位置づけるかについて述べた。日本語から英語に翻訳すると、「方針管理」とは "compass management"である。方針は自分の進みたい方への方向付けとして使うことができ、その目的は正しいことをすることだ、とMasai氏は述べた。Masai氏はリーンITを「正しいことを正しく行うこと」と定義している。

方針についての説明は文化によって変えなければならないだろう、とMasai氏は言う。文化が異なると「普通の行動」について異なる考え方を持つことがあるからだ。Masai氏は会議に到着する時間の正確さを例に挙げた。文化によって、1時間前に到着する人もいれば、15分前に到着する人もいる。会議の開始時間きっかりに到着する人も、数分遅れて到着する人さえもいる。それぞれの文化によって、彼らはそれぞれ自分の「時間どおり」だと認識しているのだ。

Toyotaの方針管理の適応方法とその恩恵、そして「リーン2040 方針管理構想」と呼ばれるものについて、InfoQはPierre Masai氏にインタビューを行った。

InfoQ: どのようにToyotaに方針管理を適応し、結果としてどのような恩恵が得られましたか?

Pierre Masai氏: 方針管理は1960年代からToyotaで適用されてきました。我々がeHoshinと呼ばれるオンライン共同ツールを開発した理由について説明します。以前「キャッチボール」と呼ばれる理論的プロセスがありました。あらゆるレベルの従業員が方針案についてのそれぞれの考えを交換でき、上のマネジメント層から承認を得ることも可能なものでした。しかし、特に地理的ロケーションと文化が異なる場合に関わる場合において、このプロセスは実質的な管理が難しかったのです。チームのあるメンバーがとても良いアイディアを持っていたとしても、それをシェアして聞いてもらう機会を得られていないと感じていました。eHoshinでは、IS部署の(後に他の部署においても)全従業員がそれぞれ自身のアイディアを提供することができるようになりました。ツールが方針プロセスを置き換えたのではありません。ツールが方針プロセスをサポートし、その結果をより強固なものにしたことで、貢献してくれる従業員のより多くの積極的な参加を得る結果へと繋がりました。従業員からのコメントによって、方針の展開段階において誰がどんな議題に興味を持っているかを知ることができます。また、方針案を実際に実行するチームのより早い行動が可能となるのです。

InfoQ: ここに至るまでにどんなことを学びましたか?

Masai氏: 従業員の参加は自然に得られるものではなく文化に左右されるものだ、ということです。例えば「トップダウン」の色濃い文化においては、トップからのメッセージによってより多くの従業員の参加を得られます。さらに、マネジメント層から貢献した各メンバーに対して、彼らのアイディアがどうなったかというフィードバックを与えることは成功に不可欠です。もし私が何か提案して、それが破棄され、さらには誰にもその理由を教えてもらえなかったとしたら、次回また参加しようとは思わないでしょう。しかしながら、説明そのものはコーチングの機会でもあります。もしかするとその案は別のチームによって違う次元で取り扱われるかもしれません。もしくは、今年とは優先事項が異なる将来に実施されるかもしれません。そのようなこともこの機会に説明することができるのです。

InfoQ: リーン2040という方針管理構想を開始されましたね。リーン2040とはどのようなもので、皆どのように参加できるのですか?

Masai氏: 我々はeHoshinというアプリケーション(第一弾)を、誰もが www.eHoshin.org のリンクからアクセスできるオープンソースアプリケーションとして構築しました。そこでは自身のユーザIDを作成してオープンなeHoshinアプリケーションのユーザになることができます。(どうぞ試してみてください。そしてもしあなたがIT関係者でオープンソースの改良ができそうだと思ったら、ぜひgithubで貢献してください。)さらに、あなた自身のプライベートな方針(パスワード保護付き)も作成可能です。娘さんや息子さんの結婚式の準備や、NGO団体の方向性について、もしくは会社の方向性や会社内の機能について、活用することができます。パブリックな方針トピックを新たに作成したり、既存の方針トピックに投稿することもできます。

パブリックな方針トピックの例としては、私が作成したリーン2040が挙げられます。このアイディアはグローバルなリーンコミュニティにおいて、これからの25年のリーン活動の方向性をどうするべきか、それぞれのアイディアを伝えるためのものです。("The Machine That Changed the Word" は1990年に出版され、「リーン」という言葉を西洋で一躍有名にしました。2015年にはこの本の25周年記念が祝われ、著者のJim Womack氏とDan Jones氏が次の25年はどのような動きになるだろうか、と思いを巡らせました。)私はこれに関して、方針を作成することで貢献しようと提議しました。

リーンムーブメントのようなグローバルなグループからのこのような構想への勢いづけは、積極的な議論の管理無くして一筋縄では行かないものです。リーンムーブメントは厳密に定義されてはいませんが、2016年11月に開催されたLean Summit UKでリーンリーダーたちと議論の場を設け、矛盾する意見についてもディスカッションしました。この議論を受け、私は今回のLean IT Summitにおけるメッセージを強めました。ITオープンソースコミュニティと同じように、パブリックな方針構想には自ら生み出された原動力があり、それはeHoshinアプリケーションそのものを継続的に改良するオープンソースコードに対する貢献に支えられているのです。

 
 

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