Auchan Franceのオンライン食料品サービスであるAuchan:Directは、新しいEコマースウェブサイトの開発にリーンを導入することにした。CEOが最初の顧客であり、新しい体験をした顧客からの継続的で高速なフィードバックを使って、ウェブサイトの品質を継続的に改善した。
Bastien Duret氏がLean IT Summit 2017で新しいAuchan:Directのサイト構築にリーンを導入したことについて講演した。このカンファレンスは3月14,15日にパリで開催された。InfoQではインタビューや要約記事でこのカンファレンスを取り上げている。
InfoQは氏にインタビューをして、Auchan:Directのリニューアルの開始について、その目的について、アプローチについて、学んだことについて、そして、技術的な開発スタックの進化について話を聞いた。
InfoQ: はじめに自己紹介をお願いします。
Bastien Duret: Auchan:Directでテックリードを務めています。つまり、開発を行うチームを率いて、食料品を顧客の自宅へと届けるサービスを提供するソフトウェアを管理しています。チームを助け、最高の環境で成功できるようにします。大規模なソフトウェア開発に情熱を注いでいます。キャリアの出発点はゲーム業界でした。
InfoQ: Auchan:Directがサイトを再構築しようとした理由を教えてください。
Duret: 2015年に行った障害の評価が始まりでした。ユーザー体験が貧弱だっただけでなく、システムを適切にメンテナンスできなくなっていました。小さな変更ですら数ヶ月必要で、品質は十分ではありませんでした。2016年に開始した再構築は次のふたつを目的にしました。
- より良い品質のユーザー体験を提供する
- 日々の改善能力を強化する技術を習得する
InfoQ: 目標はどのように定義しましたか。
Duret: 達成できないようなロードマップを元にして恣意的な目標を定義するのではなく、一つの目的を設定しました。それは、9月19日に顧客に対して最高の体験を提供することです。10月に私たちの新しい自動倉庫が稼働する予定でしたので、その予定に基づいて日にちが決まりました。この自動倉庫によって商品の増加に対応できるようになりました。
InfoQ: "オンラインからのCEOの発注"が最初の目標でしたね。この目標をどのように解釈したのでしょうか。
Duret: Auchan:Directはリーンを導入しました。最小限のプロダクトをプロダクション環境になるべく速く投入し、顧客が発注できるようにすることが本当に重要でした。最初に顧客にCEOを選んだのはこの反復的なプロセスに彼を最初から巻き込むためです。会社全体に対しても明確なメッセージになりました。
InfoQ: ウェブサイトの品質の改善はどのように行いましたか。
Duret: プロセスの中で最も重要な要素は顧客から新しい体験についてのフィードバックを継続的にもらうことでした。まだ完璧ではない段階でサイトを公開し、顧客が私たちとコミュニケーションできるようにしました。はじめは、電話番号を載せ、架電が多くなったらメールアドレスを載せました。このやり方と継続的デリバリを組み合わせるやり方はとても強力でした。
InfoQ: この再構築は内部の開発者だけで行ったということですが、そのようにした理由は何でしょうか。
Duret: 私たちは全てを持っている、という信念からうまれた選択です。フリーランスや外部の人に比べ、内部のチームはより関与が深く、長い期間にわたって高品質な仕事ができます。この選択はプロジェクトの最初に実験をすることで確かめられました。フリーランスのチームと内部のチームに同じものを作るようにお願いしたのです。成果物の品質、デリバリの速さを比べました。結果は明らかでした。内部のチームの方が2倍速く、コストは3分の1でした。
私たちは開発者に自由と責任を与えています。選択の自由があり良い意思決定ができる内部の開発者は違いを産むことができます。
InfoQ: プロダクトを自前で設計することにした、と説明していましたね。どうしてそのような決定に至ったのでしょうか。
Duret: 元のサイトを改善した一つの理由は自分たちが使っているツールと技術を習得していなかったからです。品質の高い体験を提供し、毎日改善するには習得が必要です。しかし、オールインワンのフレームワークを使うと最初は便利なのですが、特別な設計ができなくなります。つまり、全てのことができる訳ではなくなるということです。例えば、私たちはたくさんのオープンソースを使っています。Django、React、NGINXなどです。
InfoQ: 再構築にはどのようなアーキテクチャを選択しましたか。なぜその方向に進んだのでしょうか。
Duret: 私たちのアーキテクチャはとてもシンプルです。PgSQLの前にDjango APIサーバがある、というのがバックエンドの構成です。ウェブサイトはReactJSを使ったシングルページアプリケーションです。基本的なレンダリングはNodeJSが行います。ReactJSを選んだのはウェブのユーザー体験を可能な限りアプリに近づけたかったからです。バックエンドにDjangoを選んだのは単に都合がよかったからです。というのは、チームにDjangoの専門家がいたからです。アプリケーションは全てDockerで動いています。インフラとほとんど結合していません。
InfoQ: このアーキテクチャの技術的、ビジネス的な成果を計測する指標はありますか。
Duret: 技術的には、新しいサイトのパフォーマンスが向上したことです。レスポンス時間は半分になりました。スピードに関するフィードバックは改善しました。移行は痛みを伴うものでした。顧客の習慣にショックを与えるものでしたから。にも関わらず、情報伝達の速度は10%改善しました。
InfoQ: 得られた教訓を教えてください。次のステップは何でしょうか。
Duret: レガシーなシステムを進化させることがいかに複雑なことなのかを学びました。わずかな変化が深い隠れた問題を明らかにします。例えば、顧客のデータを取得しようとしたら、前年の変更が障害になったりしました。次は私たちが提供している素晴らしいユーザー体験を活用することです。特にモバイルで、です。
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