GitHubの最新の"State of the Octoverse"調査では、提供コードをより速く開発する、ドキュメントを作成する、開発者コミュニティを支援するという、3つの主要なトレンドが浮き彫りになった。さらに、成功を達成するために行動できることを特定する上で有益な、3つの予測モデルも含まれている。
GitHubの調査は、400万を越えるリポジトリからのテレメトリデータと、12,000人以上の開発者から直接得た調査結果とを組み合わせて、ソフトウェア開発企業やオープンソースプロジェクトの間にある現在のトレンドを特定しようというものだ。
全体としての調査は、さまざまな側面から開発者エクスペリエンスを向上させる方法に関連している。
優れた開発者エクスペリエンスは、誰もが思い描くものです。職場の開発者、マネージャ、そして企業は、ツールやプロセスが速く、快適で、簡単なことを望んでいます。一方オープンソースでは、プロジェクトリーダやメンテナは、コミュニティを居心地のよい、持続性のあるものにする方法を求めています。
今回の調査では、ソフトウェア開発コミュニティの生産性がパンデミック以前のレベルに戻りつつある一方で、職場組織においてはリモートコラボレーションに向けた大きな転換点であったことが分かった。事実、以前の職場への完全復帰を望む回答者がわずか11パーセントであるのに対して、約50パーセントはハイブリッドチームでの業務を希望すると答えている。完全なリモート就業を望んでいるのは回答者の38.8パーセントで、パンデミック以前に比較すると12パーセント増加している。
より速いコーディングという傾向は、オートメーションの重要性、ソフトウェアの再利用、コーディネーションの基礎としてプルリクエストの使用、プルリクエストのマージの迅速化など、数多くの調査結果によって実証されている。
オートメーションは、1日にマージされるPR(プルリクエスト)の数に直接的な影響があるため、大規模な組織においては特に重要である。マージの速度はPRにアサインされるレビュアの数に大きく影響されているようで、レビュアがひとりのみのPRは、大部分がその日のうちにマージされている。1作業日以内にマージされるPRの数は、レビュアが増える毎に17パーセント低下する。PRの重要性は、チームのコーディネーション手段としての価値によって、さらに確かなものになる。
ソフトウェアの再利用に関するキーワードは"フリクションのないこと(frictionless)"だ。ソフトウェア再利用におけるフリクションは、資格付与の手順やアクセス制限、あるいは情報のフラグメンテーションによって増大する。
フリクションフリーなコードの再利用によるメリットは、オープンソースプロジェクトにも同じように当てはまる -- プロセスの遅さや複数の承認層によってフリクションの多いプロジェクトに比較すると、フリクションの少ないプロジェクトのパフォーマンスは2倍に達しているのだ。
GitHubが見出したもうひとつのディメンションはドキュメントである。これは、READMEやコントリビューションガイドライン、イシュー管理といった、オープンソースのプラクティスが実現する価値を示唆している。このようなプラクティスは、企業においても有効に実施することが可能で、いずれの環境においても、優秀で信頼性のある最新ドキュメントは、生産性を50パーセント向上することが可能である。一方で、言うまでもなく、ドキュメントに対する投資が不十分であることも調査で確認されている。
最後に、GitHubの調査では、コミュニティの構築が成功の鍵であることが示されている。メンタリング、信頼と尊敬の促進、安全で心地よいコミュニティの確立といったことは、企業においてもオープンソースにおいても、より強いコミュニティを育てる上で有用なのだ。
前述のように、GitHubは、調査情報のひとつとしてテレメトリデータを使用している。開発者の操作情報を収集する開発ツールは、一部の開発者から批判を受けることもあるが、多くの開発者はプライバシとツール開発の合理的な妥協点として認めている。この理由からInfoQでは、この問題の明確化をGitHubに求めたところ、同社のスポークスマンから次のような回答を得た。
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今年追加した新しい調査コンポーネントについては、調査応答にPIIは含まれておらず、特定のユーザや企業、レポジトリのテレメトリにはリンクしていません。分析された調査結果はSurveyMonkeyプライバシ規約に従い、集計された形で公開されています。
GitHubの"State of the Octoverse"には、この記事で取り上げられる範囲をはるかに越えた、さまざまな洞察や価値ある発見が含まれている。PDF形式でダウンロード可能なので、調査の全容をぜひ確認して頂きたい。